その1で、「カルチノイド」について、何項目か調べてみました。
その後も手元の資料を調べてみました。 肺のカルチノイドに関しては情報が乏しかったのですが、 消化管のカルチノイドに関して、興味深い内容が記載されていたので、 その部分を抜粋したいと思います。
新臨床内科学 消化器疾患 「ガストリン(/CCKファミリー)」の項より
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空腹時血清ガストリン値は、 加齢に伴ってみられる酸分泌低下を反映して上昇傾向を示す。
一方、酸分泌亢進をきたす十二指腸潰瘍では、 酸を介した負のフィードバック作用を受けるため、 空腹時血清ガストリン値の上昇は認められないが、 試験食負荷などでは高分泌反応がみられることが多い。
こうした十二指腸潰瘍における酸分泌亢進や 刺激負荷によるガストリン分泌応答には、 H.pylori感染が大きな影響を及ぼしており、 その除菌治療によって健常人並に回復すると言われている。
また難治性潰瘍・酸分泌亢進および膵腫瘍(非β細胞腫瘍・過形成)を3主徴とする Zollinger-Ellison(ゾリンジャー-エリソン)症候群(ZES)では、 異所性ガストリン産生腫瘍(ガストリノーマ)からの過剰なガストリン分泌のため、 著名な高ガストリン血症を呈する。
幽門前庭部空置症候群、幽門前庭部G細胞過形成、悪性貧血(A型胃炎)、 慢性腎不全などでも著しい高ガストリン血症が認められるが、 ZESと異なってセクレチン負荷試験で抑制され、 いわゆるparadoxical
responseを示さない。
消化性潰瘍治療薬のH2拮抗薬やプロトンポンプインヒビターを 長期間服用している患者にも、血清ガストリン上昇がみられる事があり、 胃におけるECL細胞過形成、カルチノイド腫瘍の発生機序との 関連性が示唆されている(図6-8)。 さらにガストリン前駆体が大腸がんの増殖因子として作用している可能性が 注目されている(Hollande
Fら、1997)
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太字になっている部分が、カルチノイドに関連した内容です。
「ガストリン」というのは、消化管で働くタンパク質で、 主に胃酸を分泌させる働きがあります。
本文は、この「ガストリン」の血中濃度が高くなる原因と、 カルチノイドの発生が関連しているのではないか?という内容で 閉じられています。
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ガストリンは、胃酸を分泌させる働きがありますが、 胃酸が充分に分泌されないと感じると、ガストリンを作る工場である、 胃のG細胞が、さらにガストリンを出させようとします。
「胃酸が充分でないのはガストリンが足らないからだ。 それならガストリンをもっとつくらなくては」 という、体の判断ですね。
その結果、通常より多くのガストリンがあふれる、 「高ガストリン状態」になるわけです。
ところが、このガストリンが過剰になると、 ECL細胞という細胞を過剰に生み出す結果になり、 過剰になったECL細胞はカルチノイドになってしまう… という可能性がある、という事です。
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カルチノイドの原因である事が示唆されている、 ガストリンの過剰状態は、以下の様な原因で引き起こされる事が、 上記の文中で触れられています。
・加齢による胃酸の低下 加齢とともに胃酸の分泌が低下すると、胃酸をもっと出そうと、 「胃酸を出す為に必要な」ガストリンが増える、という事ですね。
・ピロリ菌の感染・除菌不十分 十二指腸潰瘍の時にガストリンの分泌が過剰になるようで、 これはピロリ菌の感染、あるいは除菌の不十分が関連するようで、 ピロリ菌の完全な除菌によって改善される様です。
・「胃酸を抑える薬」の長期服用 ガスターなどの「H2ブロッカー」や、逆流性食道炎で頻用される、 「プロトンポンプインヒビター(タケプロン・パリエット等)」を 長期に続けることで、胃酸の少ない状態が続いてしまい、 ガストリンを過剰に作ろうとする引き金になることがあるようです。
詳細な情報がより多く求められるところですが、 ピロリ菌の除去や、胃酸を抑える薬の長期服用から脱却することは、 カルチノイドの予防にも繋がるのでは、という事ですね。
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